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王子んちの家庭事情・捏造版

<思春期らいととクリス

へこむよ。
君のその表情、ぼくなんか問題外だってあまりに明白。

ぼくが優しいのは当たり前。
ぼくは君を好きなんだから。

ぼくが君を大事にするのは当たり前。
だって見返りが欲しいんだもの。

そうさ、無償の愛なんかじゃない、ぼくは父さんとは違う。

なのに、
馬鹿なんじゃないの後押しするなんて。
何考えてるんだって、ぼくは自分に言いたいよ…


君のその瞳に
せめて驚愕の色でもあればまだ救われる。

嫌悪とか 軽蔑とか
もっと別の感情があるなら…

「ほら、行けよ。 早い方がいい」
「……クリス…」
「それともぼくに乗り換える?」

冗談のフリで

「……ありがとう」

……あぁ、もう、どうしてそこで君は…
ねぇ 本当はもっと違うんじゃないの
ぼくらの年齢ってもっと ずっと
ずるくもあって もっと…感情に正直にさ

なのにどうしてこうなんだろう キミってば…
いつもいつも誰かが優先
いつもいつもいつも キミの望みよりも誰かのためで
振り回されて 疲れさせられて…
なのに…
悲しむのは誰かのためで
苦しむのも 誰かのためで

その悩んでる表情 かなりクルんだけど…

キミが考えてるのは誰かのことで ぼくじゃない

「クリス、チーズマフィンがあるよ」
「…蒼さん」
「灯の自信作、食べるだろ」
「………」ふらり
「………」がっし
「っ……父さん…」
「失恋の一つや二つ、今のうちにしておけ」にこっ
「っ傷心の息子にソレかよっ」
「お父さんは息子の成長に感心しているよ」

遺伝子恐るべし?

「………あんた、らいととオレが別のことを望んだら」
「オレは勿論らいとの味方」
「…だよな」
「お前だってそうだろう」
「………」

真剣に、

修復できないほどの喧嘩をしないでこれたのは

キミがいたから。

あの日はだって ぼくはちょっと不貞腐れていて
だってそうだよね?
マイペースな母さんに振り回されて 7年8ヶ月21日
かといって本当に一緒に暮らしてた時間なんて、
きっと半分に満たない
父さんの記憶が薄れることもなかったから
だからそんなことは高いハードルでもなかったけど

でも
別々の暮らしがあって
知らないヒトのテリトリーで
ぼくの居場所は無いかも知れなくて…

一方的に知っているだけのヒトを呼び止めて
八つ当たりする程度には
十分ぼくは子供で……

寂しいとは思わなかったけれど
悲しいとは感じなかったけれど
本当は
そう認めたくなかっただけなのかもしれない

ぼくは
多分
自分が弱い生き物だなんて
知りたくなかった…

その鮮やかな朱色は、

何も映してはいないことにはすぐに気付いた。

キミの強さとそのわけと あの仔は望むってことをしてきてなかった

何かを得たいと渇望したことがない

…望めば笑顔を返してくれる、与えれば嬉しそうに…

だけど、得られないことを嘆いたりもしなければ、
欲しがって泣くこともない、
ソレは物でも愛情でも同じで…

オレはね、あの仔がオレを見ないのは嫌だと思ったよ

あの仔にとって、要らない奴でいたくなかった

イナクナッテモイイヒト なんかでいたくないんだ』


それはキミを失ってから知った欲望
情欲で、埋め尽くせはしない欲求
埋めなくてはいけない穴の大きさに戸惑った

そしていつかまた違う形で…
得たいと願ったのはあの仔だからで…

ねぇ、キミが、あの仔に惹かれるのは当然だと思うよ
オレタチはこんなにそっくりで…
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