「………アンタ…　本当自覚がないな」
「蒼…？」
「………」

「何やってるんだ？あの二人は…」
「いや、二人じゃない」
「え？」
「………」
「……ちひろ…；」

オレね　自分の事よく解ってるつもりでいたんだよ
自分をコントロールするのは容易いって思ってた
自分だけじゃない
意外性　って　存外少ないじゃない

親族の話　した事なかったね
一族的な特異性かも知れないけど
親族婚は少なくない
階級意識みたいなものかな
まだあるんだよそういうの

だからオレも
一族の意思のまま　彼女と一緒になるんだろうなと思ってた
彼女はオレの子供を生むんだろうなぁって
実際そうなってはいるんだけど

オレも彼女も勝手だから
　自分の望むようにしか生きられない
お互いソレが解ってて　楽だった…

ねぇ蒼
思い通りいかないんだ
いつもキミが…

考えてた方向に転がらない…
キミとも千種とのように
他の誰もと同じように
気軽に　簡単に付き合えると思ってた
なのに全然違ってて
その内オレは自分の事もわからなくなって…

だけど突然キミは堕ちてきてくれた

…全然　思うようにならないのに……

キミは優しい…だけど全てはくれない
オレで全てにはなってくれない…

愛しいものは沢山あるよ…
だけど……キミの特別は違う…なんでだろうね…

＜かつての話＞

「産むわよ、私この顔好きなんだもの、
　この顔以外は生みたくもないし」きっぱり
「………で、シゴトも辞めないんだろ」
「なんで辞めなきゃいけないのよ？
　アンタだって辞めないんでしょ」
「そりゃぁね？」

王子の妻ではないがクリスの母

「…なんか、聞いてるとアンタそっくりだな…；」
「判る？　アネなんだ」
「…はぁあ？」
「正確には従姉だけどね、殆ど一緒に育ったからなぁ」
「顔もね、似てるよ、と言うか、似てたよ、
　昔のことだから今はどうか判らないけど」
「…そんなに違わないだろ」
「どうかなぁ？　もう１０年近く会ってないから」
「…はぁああ？」
「クリスはね、一緒に暮らしたこともあるんだけど」
「……どうして離れた？」
「留守中連れて行かれちゃってね、シゴト先に」
「…シゴト先？」
「しばらく帰れないから連れてくって、それっきり」
「……アンタラ…；」

「従姉って言うより
　母親みたいなものかなぁ…？」
「って、幾つ違うんだ？」
「…幾つだろう…？
　女性って年を隠したがるのってどうしてだろうね？」

「……千種？」

「………」

＜窓の外を見遣るに…＞

「気が合うみたいだね〜」
「………」

「ちーちゃん」
「ちーにぃ　あそんで〜」

「ちー　浮上したんならちょっと子供の相手して」
「…灯は？」
「バイト」
「りょくは？」
「母さんが連れてった」
「………しゃーねーなっ　ほら、出るぞ」
「「「わぁいｖｖ」」」
「はしゃぐなシンゴ　お前も引率なんだよ」
「わかってるよぅ♪」

「何やってたんだ？　外で」

「えーとね　うーんとね」

「あり見てた」

「１万５千４６３匹まで数えた」

「………；」

「ん〜？　……まだやってるのか…；」

ぴこぴこ　ぴこぴこぴこ…

「……俺らもやったような気がしなくもないけどね…；」

「ちひろ…ソレ楽しいのか？」

「えーと　うーんと…」

ぴこぴこぴこ…

「…いや　楽しいんならいいんだ…」

「なんか　
　久々に爺さんたちの顔見に行ってやってもいいような気分だ」
「何年帰ってないんだ？」
「ん〜………２０…８年くらい？」かな
「…ちょっと待て　アンタ一体幾つだ…；」
「知らなかったっけ？」

「あらやだ浅葱」
「あ　シルヴィア」

「…友達？　俺先帰る？」
「やだぁ　りょくと一緒久しぶりだもんっ」
「浅葱　この仔は？」
「息子のりょくです」
ぺこり
「あんた一体何人産んだの…」

「えぇっ？　もう行っちゃうの？」
「シゴトの途中なんだもの〜　♭」
「折角逢えたのに〜」ウチに行こうよ　ひーちゃんもいるよっ
「ひーはどうだっていいわ
　あんた　ほんっと変わんないわねぇ？」
「ひどっ」
「りょっくん　おっトコ前のお兄様によろしくねぇ」
「わっ」　ってどの？
「紅ちゃんはあげませんっ」
「ケチ」
あ　紅ちゃんのことなんだ…

「あ　ヒカルーっ」
「っりょく」と母さん

蘇芳さん…？　なわけないじゃない…

「あらぁ？　灯ちゃん　おっきくなって〜」
「へ？」
「……蘇芳さんに似てる」　じゃぁね〜

「………俺　知ってるヒト？」
「……………」
「憶えてたら気持ち悪いかも〜；」生まれたてだったから；